▼志摩市の英虞湾で浜島―御座―賢島間の航行を続けてきた志摩マリンレジャー運航の定期航路「浜島航路」が9月30日で72年の幕を閉じた。平成13年に1万5512人だった利用客が、昨年は1002人。地域の要望で一度は廃止を覆したがコロナ禍で刀折れ、矢尽きた
▼基本的には国道260号をはじめ主要道路の整備や路線バスの拡充などが利用客離れの原因という。頼りの県立水産高校の通学者も、徐々にスクールバスへと移行した。交通手段を持たない地域住民のため昭和24年に就航した航路が「社会的使命を果たした」(八尾弘・志摩マリンレジャー社長)。廃止を惜しむ関係者らも「時代の流れ」
▼波止場で蛍の光を演奏し、最終の定期船「おおさき」を紙テープを手に見送った。260号の整備で、路線の旧町の町長が「町が活性化するか、町外に出て行く若者が増えるか。不安の方が大きい」。善きにつけ悪きにつけ、交通革命は地域社会に甚大な影響をもたらす。産業構造の変遷、それに伴う人口増減もまた、交通路線を左右する。航路ばかりではない
▼津市郊外に、バスの停留所の案内板が百本近く置かれている場所がある。市営の巡回バスやコミュニティーバスが大半で、数カ月前に運び去られたが、民間大手の路線バスのものも2、30本はあった
▼「令和3年3月31日でこの路線は廃止になります」の告知が、停留所案内板に貼られたまま。市街地で「交通難民」問題が指摘される一方で、コミュニティーバスが廃止されていく。こちらはセレモニーもなく、静かに進んでいく。