▼緊急事態宣言解除とは関係なかろうが、都会で繁華街の人出が話題になる中で、津市一志町波瀬ではフジバカマが開花してアサギマダラが飛来。県内各地からの見学の問い合わせが増えている。「人のつながりが増え、皆で喜んでいる」と世話人。柄にもなく、万葉集の山上憶良の歌を口ずさみたくなる
▼「秋の野に咲きたる花を指折りかき数ふれば七草の花」に続いて「萩の花、尾花、葛花、なでしこの花、おみなえし、また藤袴、あさがほの花」。柿本人麻呂、山部赤人らと並ぶ奈良時代を代表する歌人。「憶良らは今は罷らむ子泣くらむ それその母も我を待つらむそ」―意味も分からず暗記したものだ
▼秋の七草は春と違って、野山での観賞用として歌に詠まれ親しまれた。食べられない。が、天高く馬肥ゆる秋。生薬として漢方で用いられてきたから、七草がゆと似たようなものかもしれない。芸術の秋であり、食欲の秋であり、スポーツの秋。津市郊外の運動公園では、体育館の告知板に運営再開のお知らせが張り出されていた。緊急事態宣言で休業のお知らせに比べ3倍ほどの大きさ。再開への思いがにじむ
▼受け付けの混雑で予測される「ご迷惑」へ理解を求めていたが、受け付けはがらんとしていた。解除後初の日曜日だが、旧に復するのはまだ先か。屋外ではテニスコートの一面と、野球場から快音が聞こえた
▼公園には家族連れのテントが十張りほど。遊具で大勢の親子が楽しんでいた。久々の憩いのひとときだが、一般的に秋からがウイルスの季節。第6波が杞憂に終わることを願わずにいられない。