伊勢新聞

<まる見えリポート>迫りくる次期衆院選 自民総裁選に野党埋没懸念

【街頭で手を振る衆院選の立候補予定者=明和町内で】

自民党総裁選が29日の投開票に向け、佳境を迎えている。自民内の争いではあるが、事実上の新首相を選ぶ選挙とあって連日注目を集める状況にある。それに危機感を募らせるのが野党だ。間近に迫る次期衆院選を前に、埋没を回避し、存在感をどう高めるかが課題となっている。県内でも特に4区は、新総裁誕生のご祝儀相場となる可能性に加え、前知事出馬というダブルパンチの激震に見舞われている。妙手があるわけでもなく、「運動量で上回るしかない」(立憲民主党出馬予定者の陣営)とあえてどぶ板に徹している。

「逆風の中の逆風」とするのは4区に立憲民主党から出馬予定の新人、坊農秀治氏だ。前知事の鈴木英敬氏が任期途中で辞任し、4区からの出馬を表明。そして菅首相の退任。総裁選レースには4候補が出馬し、勝敗は決選投票にもつれ込みそうなほどの混戦模様が世間の耳目を集めている。

陣営関係者は「正直、菅さんで選挙を戦いたかった」と本音を漏らすが、「それが自民の手法だ」と腹をくくる。権力維持のための自民の毎度の手法に翻弄(ほんろう)されている野党だが、それを覆せるほどの地力や支持がないのもまた、立民はじめ今の野党の置かれた状況だ。

さらに知名度抜群、政治実績もある鈴木氏の出馬に「そびえ立つ高い壁が目の前に現れた」(陣営)状況。坊農氏は元アナウンサーとはいえ、同じく落下傘の鈴木氏と知名度は雲泥の差。政治経験もなく一からのスタートだ。鈴木氏との戦いは、そびえ立つ高い壁を防具も付けずに素手で登るようなものとも言える。

とはいえ「流した汗の量は相手候補に負けない」と運動量に自信を見せる陣営関係者。「地道に訴えていく。それしか道はない」としている。

立民県連の三谷哲央幹事長は総裁選について「いわば高島屋と松坂屋の違い。売っている商品は同じ」と述べ、「立候補している4氏は、いずれもこれまでの自民政権の中枢にいた人。表紙が変わっても、中身が変わっていないことに国民はすぐに気付くだろう」と指摘する。

その上で、「衆院選は政権選択の選挙。政策議論を活発に戦わせていくことで存在感を高めたい」としている。

県内選挙区で唯一、4区に中川民英氏を擁立している共産党県委員会の大嶽隆司委員長は「総裁選はコップの中の権力闘争だが、昔の自民の方が熱気があった」と述べ、「もう誰がなっても自民は変わらないということに、有権者は気付いているのでは」と冷ややか。

県内選挙区については1―3区で候補者を擁立しないなど野党共闘は進むが、「立民が自民と知事選で相乗りしたのはおかしい。知事選で仲良く協力した相手と衆院選で戦うなど、矛盾している」と批判している。

衆院議員の任期満了(10月21日)まで1カ月を切った。新首相を選出する臨時国会が来月4日に開かれる予定で、衆院選は11月にも投開票される見通し。