伊勢新聞

大観小観 2021年9月26日(日)

▼「一任をとりつける」は、行動する選択肢が複数ある時の判断をリーダーなどに委ねること。三重とこわか国体・大会の延期について、同大会実行委員会は判断を知事に一任し事実上、開催断念が決まった。行動しないことも「一任」の対象になるとは知らなかったが、「実行委」の名に矛盾する。挙手ではなく「拍手多数」で承認した。聞き違い、はないか

▼昭和59年11月の知事選挙で田川亮三氏が3選を果たした翌年3月の県議会。自民党の代表質問は圧倒的勝利の喜びの陰で「県のこの数年間の重点事業が一つ、また一つと消えていくのが寂しい」。知事選の大勝利のあとに県民に長年約束してきたことを県の諸事情でほごにするのは常とう手段だが、公約の信頼性というものをちょっと考えてみたくなる

▼「県民サービス」について語ったのは北川正恭元知事だ。「余裕のある時に何かをしてやることをサービスと言わない。自分の事情は二の次が民間の常識。県職員はそこを思い違いしている」。「生活者起点」の県政を目ざして「職員の意識改革」を数年がかりで徹底したが、いま思い出す職員もいまい

▼「市町村を助けるのは県の役目」「ごみは燃料。金を払っても頂戴したい」などと市町固有の業務である一般ごみ処理に介入し、ものの見事に失敗。幕引きを図り、市町の信頼を損ねたのはRDF(ごみ固形燃料)事業で、今度は県民相手

▼三十六計逃げるにしかず。「36」は中国古代の兵法にある策略の数。困った時は逃げて身を守るのが上策とある。県は兵法に従い行動する。油断はならない。