伊勢新聞

2021年9月20日(月)

▼「10月中ぐらいでパンク状態になる」と、松阪市の竹上真人市長が市長会を通じて新型コロナウイルスワクチンの供給を国に要望していくと報告したが、ちょっとバツの悪い思いもしたのではないか

▼同日、県が何と国内で最大規模とみられる4800回分のワクチンを管理ミスで廃棄したと発表した。それまでは松阪市の1170回分が、廃棄処分の県内最多。理由も同じ職員の管理ミスで、古傷を思い出す向きも少なくなかろうからだ

▼「貴重なワクチンを廃棄してしまうことになり、深くおわびします」と松阪市はひたすら陳謝した。県は接種会場を管理する津市との「調整ミス」だと説明した。共同責任をにおわすのが見事だ

▼保管していた冷蔵庫につないだ非常用電源は、津市から委託を受けている施設管理者が通常業務として夜間落としていたというからマンガだが、「調整ミス」というより「確認不足」だろう。県が自認する〝重要案件〟では念には念を入れて、そんなことは起こり得ない

▼コロナ禍の初期、網走市の展示会場でクラスター(感染者集団)が発生した。後日の実験によると、会場の空調ではクラスターは起こらないはずだが、当日は省エネモードにしていたという。誤作動を防ぐため警報装置のスイッチを切るなど、表向きのルールが骨抜きになっているのは現代社会の様相でもある

▼地方分権一括法で県と市町が「対等・協力」の関係になり「県と市町との連携」を常に唱えなければならない時代になった。行政の垣根が教育・虐待問題などで指摘されるが、そこに限定されることではない。