伊勢新聞

<まる見えリポート>鈴木県政10年5カ月 サミットや三重の魅力発信で成果 

【退庁のあいさつをする鈴木知事=県庁で】

次期衆院選三重4区での立候補に向けて12日付で辞職する鈴木英敬知事。伊勢志摩サミット(主要国首脳会議)をはじめとした大型イベントの誘致や県の魅力発信に尽力。男性の子育て参画やパートナーシップの制度化など、多岐にわたる施策を推進した。一方、庁内からは人事や財政、不祥事の対応といった「内政面」に課題があったとする声が相次ぐ。若手職員らとの親交に励んではいたが、過去の知事を知る職員からは「庁内での対話に欠けるところがあった」との指摘も。在任期間の約10年5カ月を検証した。

ちょうど80点。記者が庁内で無作為に抽出した20人の職員に鈴木知事の評価を点数で表してもらった平均だ。1人だけ「1000点」と答えたが、100点満点で尋ねていたことから算定対象からは除いた。

まずまずの評価といったところだろうか。職員らは「何をやっても真ん中ぐらいのレベルだった三重を押し上げてくれた」「県の露出を増やし、イメージを高めてくれた」などと、口々にたたえる。

成果の代表格は伊勢志摩サミットだろう。安倍晋三首相(当時)との蜜月が生かされた結果。鈴木知事でなければ実現できなかったはずだ。各国首脳の伊勢神宮訪問は県史に長く刻まれるに違いない。

持ち前の雄弁さを生かした「トップセールス」で県の魅力発信にも努めた。先陣を切って県産品の販路開拓や企業誘致、観光誘客に尽力。育児に励んだ父親をたたえる「イクメンオブザイヤー」も受賞した。

ただ、職員らが成果に挙げるのは「外向き」の取り組みばかりだ。ある職員は「野呂昭彦前知事は私らのフロアに立ち寄って職員に声をかけたりしていたが、鈴木知事はそのようなことはなかった」と明かす。

別の職員は「重宝されるのは目立つ職員ばかり。地味なところで成果を上げても日の目を見なかった」と鈴木知事の人事に不満だったそう。「鈴木知事は私の名前を覚えていないはず」と語る職員もあった。

在任期間は不祥事にも悩まされ続けた。初当選の翌年は鳥羽港の改修を巡る公文書改ざん問題が発覚し、全国ニュースに。平成30年は障害者雇用率の算定誤りを受け、県議会で異例の謝罪に追い込まれた。

「幸福実感度」という考えを県に持ち込んだのも鈴木知事だったが、過去10回にわたる県民幸福度の調査結果は10点満点中で全て6点台。過去最高の6・75点となった3回目以降は、ほぼ横ばいだった。

そして財政。「経常収支適正度」と呼ばれる県独自の指標が改善したことを誇った一方、県債残高は在任期間で約2000億円の上昇。初当選時の公約「日本一給料の安い知事」の看板も2期目半ばで返上した。

「変えるのか、変えないのか」。鈴木知事は平成23年4月の知事選で、そう連呼して初当選を果たした。あれから約10年と5カ月、県政は変わったのだろうか。その評価は県民に委ねられている。