伊勢新聞

2021年9月12日(日)

▼「コラムニストはカラムニストだ」と言った先輩がいる。平時に乱を起こすのではなく、平時に乱に備える意だと思っている

▼米国のジャーナリストの最高賞、ピューリツァー賞の創設者は新聞の役目について、マストから四海に目をこらす見張りだと言っている。安全な運航ため、何かを見つけたらすぐ知らせる。それが障害物かどうかを判断するのはそれからだ

▼在任期間10年4カ月23日を刻んで鈴木英敬知事が県庁を去った。ずいぶん題材にさせてもらったが、ほとんどが批判だったのは恐縮だった。仕事柄、いいことは当然と思い、首をかしげることには問題ありと考えがちな習性だからだろう

▼知事は仕事柄、いいことは手腕による成果、当てが外れたら想定外と考えがちなのではないか。退任会見で印象的だったことを聞かれ、紀伊半島大水害と新型コロナの、お悔みやお見舞いではなく「対応」をあげた。いかに〝努力〟したかということだろう

▼書き散らしたコラムの内容はほとんど覚えていないが、今後機会があるたび思い出すに違いない。最近では県職員2人が懲戒処分を受けた。1人は横断歩道の自転車をはね報告を怠り、もう1人は無免許運転。続出したお粗末な不祥事が最後まで尽きなかった

▼犯罪被害者支援や、土砂、性の多様性に関する各条例など「県庁が応えていなかったことを、現場や当事者の思いで決断した」。当初は消極的で、ある時期を境に積極的に転じたのは、そのためか

▼朝鮮学校補助金停止は改められなかった。外国人の人権問題に進言する当事者がいなかったのは残念。