▼「体調はどうですか」と医者に聞かれて「体調はともかく、心は不安でいっぱい」と答えたらマスクの奥の目がにっこり笑って「みんなそうですよ」。そう言って手に取った注射針の中の濁った液体は、命のしずくのように思えた
▼ワクチンの一回目接種の時の話。二回目は前回の副反応を聞かれ「どうということもなかったが、二回目が重いと聞くので」とやはり不安を口にすると、医者は目を細めて「そうだが、しかし、深刻な事態は一回目とも言いますから」。いずれも安心、心強くさせてくれたが、一本への思いは、それがすべてのこちらと、接種を繰り返す医療側とでは埋められぬ溝があるに違いない
▼四日市市の医療機関で、新型コロナワクチン48回分を管理ミスで廃棄した。今月初旬にも鈴鹿市の医療機関で102回分を破棄したが、ともに冷蔵庫の扉の閉め忘れなどで庫内の温度が適正に保てなかったため。再発防止を誓っているが、情報の共有にも問題があったのではないか
▼鈴鹿市で破棄された時は四日市市でワクチン接種の予約が再開されたころで電話もネットもつながりにくく、知人がいらだっていた。四日市市の時は、市が再開した予約は前日までで終了。知人は医療機関との手づるで余剰分を接種できることになり、ほっとしたと伝えてきた。別世界のできごとを聞く思いがする
▼松阪市では、職員の不手際で何と1170回分を廃棄した。保冷ボックスに入れて集団接種会場に運んだ後、配送業者が回収した保冷ボックスに一ケース分残っていたという。こちらは、おとぎの国の物語である。