▼「9億円もかけて知事選をやっている場合ではない」と応援演説で稲森稔尚三重県議。金額はともかくデルタ株の感染爆発の中で個人演説会を開かないなど、異例ずくめの選挙が告示された。当日に補正予算案が発表され、きょう県議会に提出され即日採決というのもその一つ
▼17日間後に新しい知事が決まるのに、県庁を去る知事が年度の方向を決定づける。営業時短要請の協力金、無症状者を把握するPCR検査キットを9月から無料配布するなど、趣旨に申し分ない。議会が緊急会議を招集して受け入れたのも一刻の猶予もない、知事選で施策を停滞してはならないという鈴木英敬知事の主張に同意したからに違いない
▼知事交代時の暫定、あるいは中核予算は新任知事から常に批判されてきた。旧知事は新知事の裁量分を十分確保したと言い、新知事は自身が思い描く施策を実行する余地がなかったと不満をぶちまけた。コロナとはいえ、政策予算ゼロというのでは緊急時の新知事の公約にも関わる
▼「まだその状況ではない」と言い続け、ぎりぎりで対策に追い込まれることを鈴木知事は繰り返してきたが、今回初めて「これほどのカーブで感染が拡大することは想定していなかった」と認めた。立つ鳥として、感染爆発を避けて格好をつけたいという思惑が透けて見えたが、これから県政のかじを取る側はどう判断するか。存分力を発揮してほしい気はする
▼梅雨のぶり返しのような長雨の後、県全域に熱中症警戒アラートが出された。自然からの警告を思わせる中で、地球規模の視野も持ちたい県民の選択である。