▼激変緩和や軟着陸は政治の基本だが、あえて放棄したということか。来年4月からの水道料金の大幅値上げを決めた津市は、その前の同2月までの4カ月間、基本料金を無料化するという。値上げ幅の大きさを、市民は思い知らされることにならないか
▼市の上下水道事業経営審議会は老朽化した水道管の更新や施設の耐震化に約3割の値上げは「やむを得ない」と答申した。家庭用の1月あたりの平均料金は649円増の3047円。県内14市の中で3番目の低額から、一気に4番目の高額になる
▼「決断しなければならない時期が迫りつつある」と答申通りの改定を示唆していた前葉泰幸市長は唐突に無料化を打ち出した。「事業者から支援策への申請に疲れてきたという声を聞く。シンプルにできるのでもう一回やりたい」
▼4カ月でコロナが落ち着く見通しに基づくというが、無料化で大幅値上げの批判をかわそうという狙いも透けて見える。津市の上下水道は全国に先駆けて昭和初期に完成。空襲での被害も昭和40年前半に復旧した。財源の多くは津競艇の収益金に依存していた
▼平成20年前からの競艇収入の落ち込みが13年前の値上げとなり、昨年過去最大の収益へ復活した競艇からの繰入金はコロナ対策に回され、水道料金値上げになったのだろう
▼下水道整備率も低水準。全国屈指の「暮らしよい市」として定年退職者に人気の津市も、合併補助金のハコモノ建設への大盤振る舞いと、競艇依存体質から抜け出せないまま、目先を変える奇策に依存せざるを得なかったということかもしれない。