▼新型コロナウイルスの「まん延防止等重点措置」適用の17日、県のホームページに、それについての「会見動画」なるものが登場した。珍しいと思って見たら、鈴木英敬知事が1人、話しているだけ。報道陣とのやりとりもなく、これまでのメッセージを音声にしただけで「会見」というシロモノではなかった
▼AⅠ(人工頭脳)を導入した当初、知事は記者会見録の負担軽減をあちこちでメリットとして語った。といって、会見録の公開が早まったわけでもなく、毎日のぶら下がり会見や予算案発表などの臨時会見は引き続き対象外で、県民サービスが向上したわけではなかった
▼ぶら下がり会見は、鈴木知事が始めた県政周知の一環で、その熱情には頭が下がるが、会見録のないのが画竜点睛を欠いた。月2回の定例会見が壇上のあいさつなら、毎日のぶら下がり会見はざっくばらんな世間話に例えられようか。知事の人柄を知り、県政に親近感を持つ武器にもなるのに惜しいことだと思った
▼臨時記者会見は、重大事案が発生した時開くのが一般的で、会見録がないのは、その趣旨に照らしてむしろ怠慢に思えた。例えばコロナ禍の初期、県外ナンバー排斥の動きに対し、県内在住者証明のステッカーを作成した徳島県の場合、臨時会見録が公開されていて、考え方はよく分かった
▼まん延措置に伴い、県が初めて定例会見以外に掲載した「会見動画」は、知事がメッセージ部分を下を向いたまま読み上げて、県民に理解を求める態度でもなかったが、「会見」という言葉を使う感覚に、県広報の遅れを改めて強くする。