伊勢新聞

2021年8月6日(金)

▼我が家近くの信号のない交差点で、4半世紀以上前のことだが、死亡事故が起きた。こんな風に飛び出したらしいと親族らが状況を語り合っていた中で「これであそこも信号機がつく」

▼2人ではだめで、3人死んでようやく信号機が整備されると言われていたころだ。危険を予測して対応するより、行政の都合が優先された。新型コロナの1日当たり感染者がついに過去最多を更新したが、鈴木英敬知事は措置の強化を「直ちに行う状況ではない」。まだまだ―。3人目が出ていない、と言っている気がしないか

▼まん延防止等重点措置後は、2日連続17人以上の感染者が出たら「厳しい措置をとらなければならない」と言っていた。現実にそうなると「直ちに強い措置を講じる状況ではない」と言い出した。30人以上が3日連続の時は「段階に応じて対策を」。過去3番目の67人となった3日は「制限をかけることだけが対策ではない」

▼最初は低い病床使用率を厳しい措置を取らない理由にあげた。それが県警戒レベルを超え、過去最多になった今回は「重症者用病床の急激な増加には至っておらず」。次々土俵を替えていく。「段階に応じた対策」「制限をかける以外の対策」の説明はない

▼「厳しい措置」の明言から「強い措置を講じる状況ではない」までに知事の心境に何らかの変化があったのかもしれない。知事は今度はいち早く第5波を認め、デルタ株の急拡大を指摘しながら、重症者用病床を唯一のよりどころに業者への措置などは見送る構え。もはや「知事まっとう」の思いなど念頭にあるまい。