<まる見えリポート>鈴鹿のお茶、販路拡大へ 取扱店増強、ネット販売も 三重

【2番茶の摘み取りに向けて茶葉の状態を確認する水野組合長=鈴鹿市深溝町で】

新型コロナウイルス感染症拡大の影響で、生産量や売上が低迷し厳しい状況が続く茶農家への支援策として、三重県の鈴鹿市は市議会6月定例議会に、令和3年度一般会計補正予算案の中で、「鈴鹿のお茶は世界に通ずキャンペーン」事業を提案した。地域の販売店を増やしたり、インターネット販売などで販路拡大に向け取り組む。

事業費として3289万円を計上。5月27日の臨時記者会見で補正予算案を発表した末松則子市長は「鈴鹿のお茶は甘みがあって色もきれい。自慢できる地域資源」と期待を込めた。

市の特産品の一つ「かぶせ茶」は収穫前に2週間ほど黒いネットで覆い、直射日光を遮って栽培したお茶。渋味が少なく、豊富な甘みやうま味が特徴。主に鈴鹿山麓地域で栽培され、日本有数の生産量を誇る。

市によると、市内の茶園面積は推定約7ヘクタール。令和元年度の農林水産省による茶の農業産出額は、15億円(推計)で県内1位という。市の試算では、コロナ禍で収量や単価が概ね2割程度減少したと推測する。

市農林水産課の小島義弘農林振興グループリーダーは「鈴鹿のお茶は京都の工場で製茶され、宇治茶として販売されることが多かったため、生産量の割に知名度が低い」と話し、「現在は多くが大手メーカーのペットボトル茶の原料として使用されている」と説明。「平成12、3年頃から全国的なお茶離れで経営力が落ちてきたところに、今回の新型コロナウイルス感染症の影響で、茶農家はさらに打撃を受けている」と分析する。

生産の中心を担う市茶業組合(水野純志組合長)は茶農家約60軒で構成する。水野組合長(35)=同市深溝町=は「昨年は単価が下がり厳しかった。今年は少し戻ったような気もするが、今は2番茶の摘み取りに向けて準備をしている」と現状を話す。

市は昨年度、茶販売促進緊急対策事業などに取り組み、茶葉の試供品を配布。後から「どこで買えるのか」などの問い合わせが多くあり、反響は大きかったが、一方で「『鈴鹿のお茶』を販売している場所が少ない」ことが課題の一つと判明した。

そこで、今回のキャンペーンでは販路拡大に焦点を当て、鈴鹿茶取扱店舗の拡大、インターネット販売の拡大、かぶせ茶の試供品配布、飲食店での鈴鹿茶の提供―の4項目を展開していく計画。

具体的には地元スーパーだけでなく和菓子店や洋菓子店、雑貨店、コンビニなども視野に入れた幅広い営業展開や、市のホームページに鈴鹿のお茶を販売する特設サイトを開設する。

インターネット販売の拡充で、海外を含めた遠方の顧客獲得を狙う方策として、手軽に飲めるティーバッグの試供品10万袋を鈴鹿サーキットでのF1など大規模レース開催時に配布し、外国人にPRする。

そのほか、市内飲食店にも協力を求め、飲食客に鈴鹿のお茶を提供してもらう。試供品にはQRコードを付け、特設サイトに誘導することで、気に入ればその場で気軽に購入できる仕組みを作る。

同課の北川哲夫課長は「まずは地域の鈴鹿茶ファンを増やしたい。アイデアや意気込みは十分ある。地産地消や食育にもつながれば」と意気込みを見せた。