伊勢新聞

2021年6月17日(木)

▼「市長は散々見て見ぬふりを続けながら被害者面にあきれた」と言ったのは、津市の元自治会長が逮捕された時の市職員ら。前葉泰幸市長が「市役所がだまされて市民に申し訳ない」とコメントしたことに対してだ

▼「(今度の戦争で)みながみな口を揃えて(軍や官に)だまされていたという」と映画監督伊丹万作が言ったのは敗戦翌年。町会や隣組、警防団、婦人会などの「民間の組織がいかに熱心にかつ自発的にだます側に協力していたか」と説く

▼元自治会長関連のスナックで職員が働くのを盆野明弘副市長は黙認し、前葉市長とともにママからバレンタインデーのお返しの品を贈った。市長は親族の結婚式にメッセージを届けた。市職員には市長や副市長は熱心かつ自発的にだます側に協力する機構に見えたに違いない

▼市職員は「大半が事なかれで済ませてきたのがとても残念」とも。市役所中が「だます側」だった。そして今「だます側」の中で「だましたのは誰だ」の〝犯人捜し〟が始まった。盆野副市長はこのところ表面に出てこない。逮捕された元中央市民館長は顧問弁護士から癒着構造を作った張本人と報告された

▼続いて人権担当理事。「ポストが良くなかったのか、就いた者の行動がどうだったのか」検討していると市長。戦犯確定みたいな見解だ。自身が顧問弁護士らの調査を受けなかったのは〝実質雇用主〟だからでなく「関与したという確証や疑惑を持てば聴取することはありえた」

▼聴取された職員は疑惑があったか。尻尾を切り離すトカゲを連想したのは市民の代表者に対し失礼だった。