伊勢新聞

2021年6月13日(日)

▼コロナ禍の重苦しい日々の中、久々に薄日が差した思いがしたのは、感染者が判明していない高齢者や障害者施設を対象とした「社会的検査」ではなかったか。約2万人検査し陽性が二人で陽性率0・01%。全国平均の四分の一程度という結果は朗報だった

▼鈴木英敬知事も「早期の検査と探知により感染者が発生した施設でもクラスター(感染者集団)は起こっていない。社会的検査には意義がある」。その二日後、感染が判明した一人が全職員対象に「社会的検査」をした施設の入所者だった。職員は陰性だったが、入所男性は検査中から発熱。感染経路は不明で職員や入所者ら約60人が検査を受けるという

▼ちぐはぐ感が否めない。ウイルスの変幻ぶりがあらためて実感させられ、再び暗雲が立ちこめてくる心地がしたが、県の方針には何ほどの影響ももたらさないらしい。新規感染者が20人を割る日が続き、毛生え薬の毛ほどの効果が表れてきたかと思った途端、四日市市を除く11市町を「重点措置区域」から除外した

▼「短期日でねじ伏せる」という知事の決意は空振りだったが、〝利食い〟の動きは毎回ながら素早い。解除の一方で「予断を許さない状況」と逆の分析をしてみせるのもおなじみ

▼解除を含め、対策や方針を前日の会見で語り、翌日の感染症対策本部員会議でその通り決定という手順も変わらない。屋上屋の気がするが、メンバーは全員県幹部。専門家や外部委員らで構成する国の会議と異なり、異論が出るはずがない。知事が決定前日、急変するコロナ相手に迷わず話せる理由ではあろう。