【まる見えリポート】開幕迫るも課題山積 東京五輪パラ事前キャンプ 日程や参加人数示されず 対策と交流の両立に腐心

【地元のジュニア選手と交流するカナダ代表チーム=令和元年10月6日、津市内で】

東京五輪の開幕まであと40日。海外から代表チームの事前キャンプを受け入れる自治体のほとんどで、日程や受け入れ人数が示されていない。新型コロナウイルスの変異株の拡大で東京五輪の開催そのものに賛否の声がある中、海外選手の感染症対策と地元交流の両立、事前キャンプの受け入れに関わる自治体職員らのワクチン接種、地元住民の理解など課題は山積みのようだ。

三重県によると、県内では5市が東京五輪・パラリンピックに出場する3カ国の五チームを受け入れる予定。いずれも選手やスタッフの人数が確定しておらず、松阪を除く4市は日程が示されていない。

一方、海外チームの意向などで、鈴鹿市で実施する予定だったアーティスティックスイミングのカナダ代表と、志摩市で受け入れるはずだったトライアスロンのスペイン代表の事前キャンプは中止が決まった。

国内の感染状況は決して思わしくない。変異株の感染者が増加し、国が発令する緊急事態宣言は対象地域が十都道府県に拡大。三重県も先月9日―今月20日までまん延防止等重点措置が適用されている。

こうした中、国は事前キャンプを誘致した自治体に対し、海外選手を受け入れる際のマニュアル作成を指示している。4月28日には作成の手引きを改訂し、変異株の発生を踏まえた対策も追加で求めた。

手引きによると、自治体は選手の滞在先や用務先での行動制限やルールを定める。滞在中の選手を毎日検査し、結果を保健所や組織委と共有。滞在中は選手と地元住民が接触しない形で交流するとしている。

五市のうち鈴鹿、津、松阪の3市は県が誘致に関わっているため、県にマニュアルの作成を委ねている。県によると、3市で実施される事前キャンプのマニュアルは選手らの動線や検査体制などを検討中という。

体操のカナダ代表チームを受け入れる予定の四日市市はマニュアルの内容をカナダチーム側が確認している段階。行動範囲を練習会場と宿泊施設に限定し、専用バスでの移動を求めている。

パラ陸上のラオス代表チームが事前キャンプを実施する伊勢市は、詳細な日程や人数が決まらない中、マニュアルを作成している。市担当者からは「逆算して7月頃までに決まらないと(厳しい)」との声も。

誘致する際に自治体が思い描いた内容と隔たりがある。コロナ前の令和元年には、カナダのレスリング選手がジュニア選手と交流する姿もみられたが「あんなレベルのものは無理」(県スポーツ推進課)という。

とはいえ、自治体としてはなんとか交流する機会を作りたいところ。四日市市は7月17日にカナダ代表チームの公開練習を実施する予定。地元のジュニア選手とのオンラインでの交流も検討している。

ただ、事前キャンプを受け入れる自治体の職員や、委託を受けている事業者の新型コロナワクチン接種が未定という問題も。海外選手をアテンドする職員らは感染症対策を講じていても接触が避けられない。

県スポーツ推進課の担当者は「県からも当然アテンド役の職員が行く。新型コロナワクチンの優先接種の枠に入らないか国に確認しているが、明確な回答が得られていない」と困惑気味だ。

今年に入って事前キャンプの実施が突然決まった松阪市では、海外選手の受け入れに市民から賛否両論の声が上がる。竹上真人市長は先月28日の市議会で、不安視する声に「市民に理解してもらえるように発信する必要がある。代表チームを万全の体制で出迎えて五輪に送り出すのが務め」と述べた。受け入れ自治体はこれらの課題を解決しながら急ピッチで準備を進めることになりそうだ。