▼津市の元自治会長らによる補助金詐欺事件で、1060万円の補助金返還を自治会に命じた。おや判決がもう出たかと思ったら、命じたのは津市だった。事実は小説よりも奇なりというが、陳腐な小説並の事実もあるだろう。仲間割れというのは、お決まりのパターンだ
▼元自治会長らが虚偽の見積書などを提出し、ごみ箱や掲示板、防犯灯の設置や集会所の修繕を装って補助金をだまし取ったと、命じた市は言う。裁判や市議会百条委の審査だけでなく、市顧問弁護士による市寄りの調査報告書でも、自治会長らの「ら」に市職員が含まれていることは推測できる。むしろ市職員が〝仲間〟でなければ成立しない詐欺だと思わせもする
▼虚偽の見積書を提出したとされる塗装業者は一貫して否認している。「防犯灯設置」では市の中央市民館長も逮捕された。市の調査報告は、同館長が現役の人権担当理事の時に元自治会長との癒着構造を作ったとし、その後の影響力を示唆している。問題発覚後早々に退職した担当課長が〝諸悪の根源だ〟みたいな記述も
▼もっとも口をぬぐっての手のひら返しは行政の常とう手段。RDF(ごみ固形燃料)貯蔵庫爆発事件では、県が貯蔵庫建設業者を訴えた。「専門業者なのに対応を怠った」の趣旨で、業者は「RDFの専門業者ではないし、仕様書にそんな記述はない」。結局責任額が分担され、鈴木英敬知事は妥当な額と評価した。白黒の決着ではない
▼津市担当理事は「弁護士と相談し不適正な部分は請求する」。問うのは「不適正」であり、「不正」ではないということだろう。