伊勢新聞

2021年5月25日(火)

▼津市の前葉泰幸市長が特定自治会への便宜供与問題の再発防止策として議会に提案した市長直轄の「内部統制室」設置案が継続審査になってわずか1月半後に可決成立した

▼市長提出議案が継続審査になるのは平成18年の合併以降で初めてなどと、まるで事実上の不信任案可決みたいな取り上げ方をされたから、前葉市長も尻に火がついたか。継続審査に反対討論した渡辺晃一議員は「継続審査に半年や1年を費やすよりも」と早期対策を訴えたが、まさかこんなに早くひっくり返るとは思いもしなかったろう

▼「内部統制室」という名称がいかにも古色蒼然とした気がするのは、発案者の前葉市長が旧内務官僚の流れである旧自治省出身のせいかもしれない。金融庁の「企業会計審議会内部統制部会」は「内部統制」をあくまで社内ルールと規定しているのに、前葉市長は早々に元警察官を採用してせいもあるか

▼「暴力団対策や組織犯罪対策など刑事部で培われた経験を生かし外部からの圧力に立ち向かえる人材として登用した」という。内部の腐敗を正すというより、市民に牙を見せる「外部統制室」ではないか

▼市職員が特定の団体への便宜供与を疑われるのは今回が初めてでない。特定自治会長問題では、ネットに録音が載り、議会から対応を求められた市長が「今日をもって市が生まれ変わる日にしたい」(昨年10月12日)と言った直後に顧問弁護士に調査協力を求めた

▼職員が逮捕される事態になり「内部統制室」という名の防衛組織を設ける。対応には違いないが、丸投げしているように見えなくもない。