伊勢新聞

2021年5月24日(月)

▼行政の守護神、最後の防波堤―などと言われたりする監査委員が補助金返還を求めた市民の住民監査請求を認め、市に返還を勧告した。津市の元自治会長が市からだまし取ったとされる集会所の修繕工事やごみ収集庫の建設工事代名目の補助金である

▼本人が詐欺罪で公判中だから「違法とは言えない」などのお決まりの監査結果は出しにくかったろう。もうひとつ、元自治会長が市に対して傍若無人ぶりを発揮してきた代表例とも言える「資源物の持ち去り防止パトロール事業」の差し止め請求の方は「違法な事業だとは言えない」と却下し、面目を保った

▼自治会員でなく市職員がパトロールしているなどの〝疑惑のパトロール〟が議会百条委で指摘された。運営は事業の趣旨を欺くものだったが、前葉泰幸市長は「一定の効果あり」と委託先を代えて継続の意向。監査委員に腐敗の歴史を断って仕切り直しする勧告など出せまい

▼自治会と市の関係を巡る再調査結果が公表された。市の顧問弁護士で構成する調査チームの報告書が百条委調査と矛盾し、再調査となっていた。この間、補助金詐欺容疑で逮捕された元中央市民館長がのことも記述。矛盾が指摘された修繕工事は、意図的な分割発注が「確認できなかった」と改めて否定しながらも手続きは「契約規則に違反」と歩み寄った

▼前の報告書も事実をゆがめてはいない。聴取通り記述し、解釈で市の責任を薄めた。市職員の告発義務は担当業務で知り得たことが対象で、それ以外の見て見ぬふりは法に触れないという具合。顧問弁護士はむろん守護神に違いない。