伊勢新聞

2021年5月20日(木)

▼新型コロナウイルス感染症の対策強化に向けた中部圏9県の知事会議に、名古屋市からは副市長の出席だった。知事本人以外の出席は同副市長だけ。同市は中部圏知事会の正式構成員で、欠席は9県、同市ともにしにくかったか。優先するのは何か。各リーダーの本気度も問われる

▼鈴木英敬知事は、都道府県が主体となる接種のモデルナ社製ワクチンの副反応に関する情報提供の必要性を強調した。いまさらという気はする。県主体の実施を政府に回答する方針を明らかにしたのは12日の定例記者会見。ワクチンはモデルナ社製だとし、大規模会場か巡回方式かを「詰めている」

▼未知のモデルナ社製についての情報が十分でないという認識のまま接種を決めたということか。政府が政治日程をにらんで自衛隊投入などワクチン接種を急ぎ、どたばた劇とも称されている。ワクチンの安全への懸念を後回しにして知事が国の方針を受け入れてしまうのはなぜか

▼国への要望には供給量や配分スケジュールの迅速、具体的な共有が盛り込まれた。いずれも、いまだ明確ではないということだろう。国が所有する変異ウイルスや後遺症などのデータを提供してほしいという意見も出た

▼鈴木知事は接種の人材確保に向けて政府の「縦割り打破」も求め、国立病院機構や大学病院の医療従事者を確保する「強力な働きかけ」という要望に反映された。知事は県のチームの医療従事者を「国立病院機構や大学、企業、組合、産業医」で構成すると語ったが、それぞれを所管する国の省庁の違いでうまく進まないことを物語っている。