伊勢新聞

2021年5月17日(月)

▼どこやらの市長がちゃっかりワクチンの優先接種を受けていたという報道に笑ったが、県でも、町長や町職員、副市長らが受けていた。地元紙としては笑ってばかりでもいられない

▼町長と職員が医療従事者枠で受けた明和町では、担当職員が「現場に出て指示する立場なので危機管理上」と説明し、キャンセル分で接種した亀山市の副市長についても担当者が「(余ったワクチンを)捨てるわけにもいかなかった」。市のワクチン接種推進部長も兼務していたから、立場を強調してはおかしなことになると危惧したのかもしれない

▼全国で優先接種した首長らの代表的釈明をそれぞれ踏襲した格好。鈴木英敬知事は「(事前接種は)住民の皆さんに説明責任が果たせるようにすることが重要だ」。田村憲久厚生労働相が14日の会見で語った苦言に似ている

▼釈明する側は、大規模災害で陣頭指揮する姿や、ワクチンが余って捨てられた不祥事を連想させ、非難する側も住民を引っ張りだし、真っ先に逃げるのかなど、むき出しの思いなどは口にしないのだろう。どちらもどこからも反論がこないような〝冷静な発言〟に終始している

▼菅義偉首相は東電福島第一原発を訪れ、浄化処理した水を「飲んでもいいの?」と聞きながら飲まなかった。県では、もっとも危険度の高い病原菌を処理する医療機器の導入で、県職員が、そこの処理水を飲んで反対運動を一気に沈静化させた。牛海綿脳症(BSE)事件では当時の野呂昭彦知事が全国に先駆けて安全宣言し牛肉を食べてみせた

▼政治家の覚悟はかなり落ちているようだ。