伊勢新聞

2021年5月14日(金)

▼「あってはならない」は、鈴木英敬知事がよく口にする言葉としてすっかりおなじみだが、12日の会見でも2回。ともに新型コロナウイルスのワクチン接種を巡る〝騒動〟で、一つはスギホールディングス創業者夫妻の予約に西尾市が便宜を図った問題について。もう一つは、県主体の接種チームを始動させることについて

▼「あってはならない」ことの多き世の中である。が、県の始めようとしている施策に知事があらかじめクギを刺すような使い方はやはり異例ではないか。県主体で接種を進めるに当たり「市町が確保している医療従事者をはがすことは絶対にあってはならない」というのだ。県職員の連中は何をし出かすかわからんという含意がないか

▼我が国の周回遅れのワクチン接種の原因はさまざまだが、最近はもっぱら医師不足があげられている。その医師を、県と市町で争奪戦を演じかねないと知事は懸念したようだ

▼県教委が障害者の法定雇用率を大量水増しした時、正常化を急ぐあまり民間の障害者を引き抜く恐れがあり、実例も聞くと議会が指摘したことがある。県教委はその後2年で達成。杞憂(きゆう)ではあるまい

▼4月に市町の接種を「しっかりサポートしていきたい」と言っていた知事がわずか1カ月後に「主体で取り組む」と言い出した。大規模接種会場か巡回かはこれから決めるという。ワクチンは20日以降承認見込みのモデルナ製。山中伸弥京大教授がファイザー社製と比べ副反応の「頻度がやや高い傾向」と発信している

▼知事ではないが「あってはならないこと」と口から出そうになる。