伊勢新聞

2021年5月13日(木)

▼「優良事例を紹介してポジティブに活用してもらえるようにしたい」のだという。新型コロナウイルス対策が万全の飲食店にステッカーを貼る認証制度を開始するに当たり、鈴木英敬知事は「飲食店と利用者の双方にとってメリットがある」

▼名称が「みえ安心おもてなし施設認証(あんしんみえリア)」。県が安全宣言をしてやるということだろう。県独自の緊急警戒宣言から国の「まん延防止等重点措置」対象地域に指定される中で、当初「飲食店への時短要請などはしない」とした方針が一転。県全域に時短要請し、酒類提供禁止にまで踏み込んだ。一方で、当初のいわば〝推奨店制度〟は実施する。ブレーキとアクセルを同時に踏む考えはこの期におよんでも健在とみえる

▼認証制度自体はクラスター(感染者集団)発生店が店名公表に応じないため明らかにできないことを県民にわびる中で示された。感染対策とプライバシー保護の間での苦肉の比較衡量策というなら評価できなくはない

▼認証の基準は県のやることだからすべてに行き届き抜けはない。政府の基準案に「トイレの清掃」など独自項目も入れたという。トイレには別に使い方の基準もある―「蓋がある場合は、蓋を閉めて汚物を流す」。10日付の『県指針』は「蓋を閉めて汚物を流すよう表示する」だった。多少現実対応したか。県庁舎のトイレはおおむねフタはない

▼津市営公園ではフタのないトイレに「蓋を閉めて」の表示がある。指針を厳格に守ったのか。制度をつくれば後は終しまいという行政慣行をコロナは見逃さず浮き彫りにしている。