<まる見えリポート>松阪市ハンズオン支援 コロナ乗り越えるアイデア

【ハンズオン支援を受けた橋本代表(左)から成果報告を受ける竹上市長(右)=松阪市役所で】

三重県松阪市が市内中小企業から公募で1社選び、商品開発から販売、宣伝まで伴走支援する「ハンズオン支援事業」は募集を6日締め切り、6社が応募した。昨年は新型コロナウイルス感染症の余波で募集を中止したが、4回目の今回はコロナを乗り越えるアイデアを支援する形になる。

ハンズオンは自治体初の事業として平成29年度から始めた。情報発信や人的ネットワーク、資金面をサポートし、新サービスの創造からマーケティングの改善、販売促進まで集中支援する。

審査員はグレーター・ナゴヤ・イニシアティブ協議会や県工業研究所、金融機関から招き、審査委員長は三重大学地域イノベーション学研究科の西村訓弘教授が務める。

ビジネスプラン発表の公開審査会では事業の必要性や実現性、期待される効果などを見る。これまでの審査会では「本当にこれなら勝てるものを一個一個はっきりさせて掛け合わさないと。掛け算なのでぼやかしたものがあるとゼロに近づく」「自分たちの思いが強すぎると自分たちの姿が見えなくなる」など助言があり、プレゼン自体が支援になっている。

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最初の対象企業に選ばれた保冷剤製造「三重化学工業」(同市大口町)は新ブランド「メディアン」を立ち上げ、医療分野に進出している。

続く第2号は松阪豚専門店「まつぶた」(同市高町)を選定した。橋本妃里代表は先月19日、市役所を訪れ、竹上真人市長に「魔法のどて煮」や「魔法のトマとん」、鍋用野菜付きセット「松阪豚の肉ケーキ」など新商品を披露した。

橋本代表は「コロナでおうちで過ごす時、非常に役立つ楽な商品」とアピール。「ハンズオンでいろんな事業者とコラボできた。この縁を生かしていかない手はない」と事業展開への利点を語った。

第3号は仏壇仏具店「佛英堂」(同市中町)。野呂英旦専務が寺院を公共施設と捉え、空いているお寺を使えるオンラインサービスを提案した。

最近はさらに発展させ、期間を決めてお墓を利用できる新サービス「偲慕(しぼ)」を始めた。寺院と提携し、墓石の価格を相場の5分の1程度に抑え、解約時には永代供養墓に埋葬する。

野呂専務は「お墓を作らずに遺骨を自宅に安置する人が増えているが、『骨壺・骨袋のまま置いておくと、ちゃんと供養できていない感覚になる』という声も多い。そこで考えた」と説明。全国展開を目指す。

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野呂専務も入る松阪商工会議所青年部は3月18日、竹上市長に地域経済活性化の政策提言書を提出し、ハンズオン支援を「独自性の高い優れた事業」として拡充を提案した。

提言では「単体事業者だけではなく、コラボレーションによる複数企業による新規事業提案をも、そのハンズオン支援の候補として認める」「地域課題(例:観光客の移動手段が少なく不便など)を設定」などを求めた。

竹上市長は「アフターコロナで商売のやり方もかなり変わってくる。若い皆さんのアイデア、新たなチャンスを支援していきたい気持ちでいっぱい」としつつ、「まだ応募が少なく、もっとたくさん100社ぐらいあると、選定する1社という数を考える」と話した。

事業を担当する企業誘致連携課は「前回の応募は10社。今回は6社だが、コロナの影響を考えると少なくない」と評価。「東京や首都圏での販路拡大支援のウエートが大きいので、昨年はコロナのため募集を中止した。今回も状況は同じだが、展示会はオンラインでできるようになった」と再起動を図る。今月13日に公開審査会を開く。