伊勢新聞

2021年5月4日(火)

▼「警察官からセクハラを除いたら何も残らないのに」―警察・司法畑経験が長い共同通信社幹部がこんな警句を言って笑ったのはふた昔も前のことだ。新人記者がまず警察担当から出発するのが日本の新聞社のシステムだが、配属したばかりの優秀な女性記者が次々辞めていく。使命感を持って入社した女性が、警察官から低レベルのセクハラ発言を浴びせられて嫌気がさしてしまうらしい

▼三重県警も同様で大きな問題に発展したこともあった。その県警津署に、県警初めての女性の刑事第一課長が誕生した。サスペンスドラマでは珍しくないが、女性差別の中での苦悩も描かれる。周回遅れの津署刑事第一課長はどうか

▼本紙『まる見えリポート』で本人が語るのは、夜間の事件に1人だけ呼び出しがなく「落ち込むこともあった」というだけ。セクハラの言及はない。育児休暇の3年取得や当直免除など「以前より働きやすい環境」だとし「これから家庭を持つ、あるいは持っている職員の良いモデルになれれば」という。気概はドラマの女性上司と共通する

▼3年育休が県の制度では無給になっているのは働きやすくなる余地がまだまだあるということか。佐野朋毅本部長は評価を性別でなく能力で判断したいとしながらも「男社会で何年もやってきたのですぐにとはいかない」。警察だけと思わぬが「これまで培った組織文化などを少しずつ改善し」

▼県内事業所の男性育休取得率が9・4%だが県警の令和元年度は1・9%で県内最低。男女平等の憲法より「組織文化」を優先させるというのも警察ドラマを地で行く。