2021年4月29日(木)

▼「飲食店からそれほど感染者が出ているのか、との声もある。対策がしっかりしていないところと一緒に扱われることへの不満もある」と、県が招集した新型コロナウイルスの感染拡大を受けた緊急経済会合で、出席した経済団体の一人が言ったという。緊急警戒宣言の対策強化で飲食店への営業時間短縮を要請したことへの反応だろうが、鈴木英敬知事はどう答えたか

▼飲食店から感染者が多く確認されているわけではない、というのは知事が警戒宣言を出すに当たり、当初の認識。時短要請も考えていないとしていたが、その後の新規感染者の相次ぐ過去最多更新で、認識を改めるべき事象が出てきたということか、それとも取りあえず飲食店を標的にしたか。当事者には誠実に答えるべきだろう

▼また、対策がしっかりしている店とそうでない店があるのは、警戒宣言が対策の徹底を求め、認証制度を作ろうとしていることでも分かるが「一緒に扱われる不満」は、社会の監視強化を招きやすい。自分はこんなに努力しているのに、あいつは何だという敵視との親和性である。緊急事態宣言下の首都圏では、戦中の隣組を思わせる話も報じられていた

▼感染拡大防止に向けた「県指針」の中で、知事は「敵はウイルスであり、隣人ではない」とし感染者や家族、医療従事者、外国人への差別、誹謗(ひぼう)中傷厳禁を呼びかけている。そうなりかねない兆候に知事は反応しなかったのかどうか

▼会合後「宿泊キャンペーンで経済の復活に向けた取り組みをしたいが、まずは感染押さえ込み」。言いわけのように聞こえぬでもない。