▼過去最多の新規感染者を約90日ぶりに更新した21日に、明日はもっとひどくなると想像することは難しいことなのか。鈴木英敬知事は緊急記者会見し「通常の医療にも影響を与えかねない」と危機感をあらわに県民に感染防止対策の徹底を呼び掛けたが、自らは感染拡大に備える「まん延防止等重点措置」について「(国へ)要請する段階ではない」
▼その翌日の22日、申請を検討する有識者会議設置へと追い込まれた。またも、何かせざるを得なくなった格好だが、行き着く先が先行都府県で効果が疑問視される「まん延防止措置」というのでは、心もとない気がする
▼「飲食店の感染は、それほど多くは確認されていない」と言ったばかり。「まん延防止」発令も、という事態になって営業時短要請というのも、真剣であるほど間が抜けて映る。変異株の影は誰もが感じていた。九日以降の感染者97人のうち、変異株が92人。園児だけのクラスター(感染者集団)認定保育園の出現―などは、影が現実になったようにしか見えない
▼20日からの県独自の緊急警戒宣言で、変異株にポイントを当てた防止策を打ち出せず、宣言二日目に早くも次策の検討を迫られることになった。移動自粛、接触機会減、ワクチン接種が防止策の三本柱だが、宣言には新味がなく、ワクチン接種に至っては言及もなかった
▼「悲観は気分、楽観は意志」として、楽観論者の知事は明るく前向きに活躍する未来へ県を導く意志を語った。コロナ禍でその意義は増すが、不安な県民への明確でぶれぬ方針の明示もお忘れなく。