▼本紙掲載エッセー『日常の社会派』で著者山崎ナオコーラさんがぼうず頭にしたら「かっこいい」と評判だった話を紹介して、半面「何かあったのですか」とも言われたと書いていた。罰やルール、願掛け、病気などが思い浮かぶせいかとし「普通ではない」ことへの社会の受け止め方に思いを巡らせた
▼逮捕された自治会長から津市職員がどう喝されて丸刈りを強要されたというのも、罰や謝罪の表現として定着しているからだろう。「坊主」は新聞業界では不快用語として使用を禁止している会社が多い
▼昔、社会人になるための入社試験や入社初日に1時間以上遅刻し、札付きの遅刻魔だった。「今度遅刻したらぼうずになるか」「いいですよ」のやりとりで、あっさりぼうず頭になることになった。やってみると、約束した上司でさえ驚がくの目を向け、一切が許された
▼一気に距離が縮まった取材先も多く、以後味をしめ、変遷した会社でここぞという時ぼうず頭になり不始末を帳消しにした。バリカンを浮かせる未練がましい刈り方で、山崎さんのおそらくスキンヘッドとは違う。誰も「かっこいい」と言わない
▼最近スキンヘッドも増えた。反社会的勢力かと身構えなくてよく、陰でハゲと呼んだら「そんな言い方は…。本人がどう思うか」と注意された。ハゲはどういうわけか「不快用語」に入っていない。「本人の前では言わんさ」とお茶を濁したら「実は夫もハゲていて」
▼口は災いの元。ちょんまげでも金髪でも病気かどうかも含め髪型など気にされなくなるといいなというのが山崎さんの結論。同感。