<まる見えリポート>コロナワクチン一般高齢者接種 25市町は来月中にも開始

【一般高齢者へのワクチン接種開始時期の見通し】

高齢者を対象とした新型コロナワクチン接種が県内でも始まった。ワクチンの供給量が限られるため、多くの自治体は高齢者施設の入所者を優先して開始。施設に入所していない一般高齢者の接種開始が最も早いのは東員町で今月19日から。ワクチンの供給量には不透明な部分もあるが、本紙の調べによると、県内29市町のうち25市町は来月中にも一般高齢者の接種を開始する見通し。

12日に県内で初めて高齢者向けの接種を実施した津市と四日市市に続き、伊勢、松阪、鈴鹿、熊野、東員の5市町が19日に接種を開始する。7市町のうち東員町を除く6市は高齢者施設の入所者を優先する。

今月の最終週までに届くワクチンは51箱で、接種できるのは2万5千人程度にとどまる。量が限られるため、クラスター(感染者集団)の発生が懸念される高齢者施設の入所者を優先する自治体が多い。

一方、東員町は施設入所者よりも先に一般高齢者の接種を19日に開始。同町健康長寿課の担当者は「町内の高齢者施設でクラスターの発生はなく、家庭内感染が中心のため一般高齢者を優先した」と説明する。

離島に住む高齢者への接種を先行させる自治体もある。鳥羽市は26日から坂手島、神島、菅島の3つの離島で集団接種を実施する方針。本土と答志島に住む高齢者は来月下旬以降に開始する。

高齢者向けのワクチン接種が始まる中、国が最優先で接種するとした医療従事者の分が届いていない問題もある。伊賀市は今月高齢者分として供給されるワクチンを、接種が遅れている医療従事者分に転用する。

自治体ごとに優先事項が異なり、今月最終週までに届くワクチンの使い道は判断が分かれる。ほとんどの自治体はまとまった量のワクチンが供給される見通しの来月中に一般高齢者のワクチン接種を始める。

ワクチンへの関心は高いようだ。津市が先月15日に開設した相談窓口には今月11日までに計約4千件の相談があった。多くは予約開始の時期に関する問い合わせで、接種への不安の声はあまりないという。

他の都道府県ではワクチン接種の予約が殺到し、開始5分で受け付けを終了した自治体もある。東員町や木曽岬町は予約時の混乱を防ぐため、より年齢の高い高齢者から順に接種券の発送を始めている。

高齢者施設以外でのワクチン接種は、自治体が設置する特設会場で受ける「集団接種」と、身近な病院や診療所で受ける「個別接種」があり、個別接種が可能な医療機関は各自治体が公表している。

ワクチンの接種体制は29市町のうち集団接種は26市町、個別接種は17市町で実施。このうち集団接種と個別接種の両方を実施するのは15市町で、医師会と調整中の自治体もみられる。

県内で最も面積の広い津市は集団接種と個別接種を併用。旧津市と旧久居市にの地域は集団接種会場を商業施設に開設し、旧8町村には巡回型の集団接種会場を設けることで接種をスムーズに進めたい考え。

桑名市は個別接種だけを実施する体制を「桑名モデル」としてアピール。同市コロナワクチン接種課の担当者は「かかりつけ医で安全に安心してワクチンを打ってもらいたい」としている。

医療従事者も高齢者も待望している新型コロナワクチン。高齢者向けのワクチン接種は今のところ1瓶当たり5人分採取できる注射器が使用されているが、6人分の注射器を来月10日から導入する方針を国が示すなど流動的な部分も多い。県内市町の首長には「国から供給されるワクチンの量次第」(前葉泰幸津市長)と慎重な見方もあり、一般高齢者の接種開始時期について「未定」としている自治体の判断もうなずける。