2021年4月8日(木)

▼「象牙の塔」は「学者が現実社会から疎遠になること」。例えば事件や不祥事相次ぐ三重大が3月4日まとめた「原因分析及び再発防止策」で指摘したことか

▼「ハラスメントや情報漏洩等を含めた不祥事全般に言えることだが、教職員の一人一人の意識改革が最も重要であり、社会の変化を的確に捉えて、自身の考え方や教職員としての倫理を改めて見つめ直し、責任ある行動を心がけることが必要である」。不足していたということである

▼具体的には、カルテ改ざん事件が発覚したのが昨年3月で第三者委員会が報告したのが9月。その1カ月後の学長選考会議で事件当時病院長だった伊藤正明教授が学長に選任、その後の贈収賄事件、クラスター(集団感染)、セクハラ、薬剤紛失などの不祥事をくぐり抜け、6日の就任会見に至ったことか

▼「反省点を踏まえ、全力で対応していかなければならないと捉えている」と就任会見で。責任を問われることもなかったのは、社会の変化を的確に捉えたということか。思えば、伊藤氏の学長選任に前後して病院長を務めた付属病院で事件、不祥事が噴出し出した

▼第三者委はカルテ改ざんについて製薬業者からの寄付は「教育研究に使われた」として個人的な使用目的を否定し、贈収賄事件になった機器導入とともに大学の各委員会の審査で決定したとしている。検察・警察当局の判断とは別に鈴木英敬知事は「統治の問題」と語った

▼「外見は学究的で進歩的に見えながら、その厚い強固な壁の内側は」―山崎豊子著『白い巨塔』を思わせる世界があるのかもしれない。