伊勢新聞

2021年4月6日(火)

▼16年ぶりというから、新人の元市議小久保純一氏はもちろん、再選をめざす現職の中村欣一郎氏も、初めての市長選みたいなものか。公開討論会や告示後の第一声などを見た限りの話だが、堅さが目立つ。よそ行きの趣だ。危機意識がある市民の期待とかみ合うか、気になる鳥羽市長選である

▼「課題と展望」を探った本紙『まる見えリポート』は「どうする市の未来」として「コロナ禍や人口減など山積」と指摘した。両候補とも市の未来は語るが、コロナ禍や人口減に直接響く言葉はない。「未来を語ってもらいたい」という寺田順三郎・市観光協会会長は一時的にはV字回復も見えた国の「GoToトラベル」について語る

▼「人を減らして運営していたところは(急増した観光客に)対応しきれず、泣く泣く断りの返事も」「制止はすぐにできるが拡大は時間がかかる」。コロナ禍での解雇や雇い止めは大都市ばかりでないことを語ってもいる。「コロナ後の(観光)復興に焦点を」という願いは、人口減対策でもある

▼観光客減で肩を落とすカキ養殖業の中村修一・丸善水産社長は「ここが踏ん張りどころ」としながらも「鳥羽で水産業がなくなったら大勢が先が見えなくなる」。一昨年のカキの大量死に始まり、コロナ禍での観光客、出荷先減で、明日の水産業を心配する

▼中村候補のブランド魚介類の発信力、小久保候補の漁協や経済団体との連携などの水産業振興策とは切実感に差がある気がする。コロナ対策の言及がないのは争点にならないということか。市民の最大関心事と差があるということだろう。