任期満了に伴う三重県の鳥羽市長選が4日告示され、平成17年以来16年ぶりの選挙戦が始まった。共に無所属で現職中村欣一郎氏(62)=安楽島町、自民党推薦=と、元市議の新人小久保純一氏(63)=鳥羽五丁目=(届け出順)の一騎打ちの構図。コロナ禍での産業活性化や人口減少対策など山積する課題への対応が争点となっている。
市民文化会館サブアリーナや消防本部庁舎建設などハード面での実績を強調し、都市機能の集約や水産研究所を中心とした海洋研究拠点の確立などを2期目の公約に掲げる中村氏。「地味だが堅実」と一定の評価を示す声がある一方、「正直あまり実績が見えてこない」とやゆする声もある。
片や、「衰退から発展へ」を合言葉に改革を訴える小久保氏。民間で培った経験や人脈を強調して、市長給与の削減や副市長撤廃、財政健全化などを公約に掲げるが、認知度の低さや職歴の変遷を不安視する声もあり、どれだけ反中村層に食い込めるかが注目される。
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「浦村かき」の愛称で、県内有数の養殖カキの産地として知られる浦村町。例年は5月の大型連休まで、20軒以上の店が連なる焼きがきの食べ放題目当てに訪れる大勢の観光客で賑わう地域だが、今年は行き交う人の姿もまばらだ。
「コロナ前は平日の多いときで200人ぐらいは客がいた。それが今は数えるほどしか来ていない」。同地区で40年間、カキ養殖を営む丸善水産の中村修一社長(60)はため息を漏らす。
始まりは令和元年に発覚したカキの大量死だった。海水温の急上昇などが原因とされるカキのへい死で大きく出荷が落ち込んでいたところに、新型コロナウイルス感染拡大の影響が直撃。食べ放題利用の3割以上を占める海外旅行者は姿を消し、移動自粛で国内の利用客も大きく減少した。
加えて飲食店の需要低下により大阪、東京市場への出荷分や海外輸出用の冷凍カキの出荷も落ち込み、売上は半減。今はネット注文が頼りの状態という。
新型コロナの発生前年に社屋を改築したという中村社長は「全て借金で建てた。タイミングが悪かった」と苦笑いを浮かべる。本来は休業補償を申請したいところだが、翌年以降の種付け作業のため休業できず、人員を減らしながら営業を続けている。
「3年生き延びられたら何とかなる。今が踏ん張りどき」としながらも、「鳥羽で水産業がなくなったら大勢が先が見えなくなる。何とか元気にしてほしい」と窮状を訴える。
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同市観光課がまとめた観光統計によると、令和2年の市内の観光入り込み客数は対前年比30・2%減の295万7034人。日帰りや宿泊客数から算出した推定消費額も同28・8%減の487億4265万円と、大きな落ち込みとなった。
市内に点在する宿泊施設144軒のうち、57軒の宿泊施設が集まる相差町。「石神さん」の愛称で知られる神明神社や、海女小屋体験で多くの観光客が訪れる同地区もコロナの影響で大きな痛手を受けた。
町内会長で海女文化運営協議会の理事も務める中村幸照さん(66)は「海女さんが漁をしても買い手が付かないので休業せざるを得ない。観光客もコロナ発生前は年間20万人を見込んでいたが3分の1くらいに落ち込んだ。それでもよく来てる方」と話す。
戸田家社長を務める同市観光協会の寺田順三郎会長(69)は、「鳥羽市の産業の9割以上が観光に依存している以上、何とか観光を盛り上げてもらいたい。コロナ後の復興に焦点を合わせてもらえたら」と語る。
国の「GoToトラベルキャンペーン」などの影響で一時的にV字回復を見せた業者もあった一方、人を減らして運営していたところに急激に観光客が押し寄せたため対応しきれず、泣く泣く断りの返事を入れた事業者もあったという。
寺田会長は「制止はすぐにできるが拡大は時間がかかる。うまくコントロールしてもらえたら」と述べ、「今後の鳥羽をどうするか、未来を語ってもらいたい」と話した。