2021年3月29日(月)

▼検察側は心神耗弱を、弁護側は心神喪失を訴えた。津地裁の裁判員裁判で、夫の首などを刺して殺人未遂に問われた妻は「正常な精神作用に基づいて罪を犯したといえる部分が残っていたと認めるには疑問が残る」として無罪が言い渡された

▼心神耗弱は責任能力を軽減、心神喪失は免除される。微妙な精神医学に関わる問題で検察、弁護双方とも専門家の鑑定をもとに主張したのだろうが、専門外の裁判官・裁判員が心神喪失を認めてしまう。大変なことではある

▼根拠の一つは妻が覚醒剤使用者であったことだろう。同時に問われた覚醒剤取締法違反の方は求刑が7年で、判決は懲役2年10月。覚醒剤使用で四度逮捕された元芸能人田代まさし受刑者が3年6月の求刑で2年6月の判決。比べてかなり重い。違法性が認識できず、弁護する能力もない状態だったということだろう

▼大紀町の57歳の無職女被告が、それほどの覚醒剤使用者であったことに驚かされる。主婦や学生に拡散という報道が急に身近に迫ってきた気持ちだが、思えば覚醒剤使用では前知事の長男が逮捕される事件があり、県を震撼させた。前知事の三選不出馬に影響したとも言われ、県政に長く爪痕を残したことにもなる

▼逮捕は二度目で、一度目は不起訴処分だった。覚醒剤と完全に手を切れるよう、今後子どもに寄り添っていくと言う前知事の決意が心に残る。それがいかに難しいかも、その時教えられた。県が薬物の濫用防止条例を制定したのはそれから5年後の平成27年。この間は何なのか。緩い防止運動を物語っている気がする。