伊勢新聞

2021年3月28日(日)

▼「スズメ百まで踊り忘れず」という。若いころ身につけた習慣や癖はいくつになっても改まらないことのたとえ。鈴木英敬知事が国政転出について「任期を全うすべく努力する」としながらも「国が変わってくれたら良いのにな、と思う側面はなくもない」と語った。昔の講演録の一節を思い出す

▼嘉田由紀子滋賀県知事(当時、現参院議員)が主宰した政治塾に鈴木知事が講師として参加したことがあった。政治に志した動機を語っていたのを興味深く書店で立ち読みした。経済産業省の若手官僚らで省改革が熱く語られ、その方法論として知事は政治家として省外から改革する道を選択したというのだ

▼その思いを胸に平成21年総選挙に出馬し、一敗地にまみれたということか。「国が変わってくれたら良いのにな」という言葉が、かつての読後感と重なる。知事は「コロナ対応の先頭に立つ中で」改めて初心を思い出したということか。ともあれ、似た思いで多くの県議が国政への転出を目指した

▼記憶に残るのは県議3期後平成8年総選挙で当選した中川正春衆院議員だ。「県政の課題をたどっていくとすべて国につながる。そこを何とかしないと解決しないんだ」と語っていた。自民から日本新党。県議選でトップ当選を続けてきた地盤の松阪市を離れて2区から新進党公認で出馬するまで、はたからはうかがえぬ苦悩もあったに違いない

▼鈴木知事も落選から知事当選の2年間はそうだったろうが、国政への思いは今、初心の国の改革か、県の課題解決か。そのどちらかをしばらく見極めていかねばなるまい。