伊勢新聞

2021年3月27日(土)

▼矛盾をはらんだ聖火リレーの開始ではあろう。「密」は防げるのか。1年以上の新型コロナウイルスとの戦いで、その問いはコロナ感染の不安に直結する。第1走者の日本女子サッカー代表なでしこジャパン元メンバーの笑顔は津波、原発事故でうちひしがれた日本に感動をもたらした10年前のワールドカップ優勝をよみがえらせてくれる

▼「感染が収まっていない中、とにかく安全安心にということになるが」と三重とこわか国体・三重とこわか大会(全国障害者スポーツ大会)実行委員会の常任委員会で、鈴木英敬知事は言った。「盛り上がった機運を東京五輪や三重とこわか国体・大会につなげていきたい」とつなげたあいさつもまた、矛盾に満つ。開催中止の基準を常任委で承認したのだ

▼東京五輪開催が前提としてきた開催基準に、緊急事態宣言が8月中旬以降発令されないことの条件が加わった。医療機関の逼迫(ひっぱく)も検討材料。首都圏の緊急事態宣言解除は感染を封じ込めたからではなく、継続しても効果が見込めないためといわれる。次回は効果が期待できる策と抱き合わせでなけれは発令できまい。そんな政治的な宣言に、開催か否かの判断基準を依存する

▼県独自の緊急警戒宣言解除後も、下げ止まりの感があり、変異株増の懸念が広がる。「安全」は具体的施策の確かさが目安だが、「安心」には精神的信頼が欠かせない

▼過不足があるのはやさしいが「正当にこわがることはむつかしい」という寺田寅彦の著書を知事は引用したが、県民がそれを実行できるどうかは知事への信頼がバロメーターになる。