伊勢新聞

2021年3月23日(火)

▼桑員河川漁協への協力金支払い問題で、請求に実質〝お墨付き〟を与えていた県が「再発防止策」名目の〝早逃げ作戦〟に転じ「不当請求」と言い出したが、漁協側の「豊かな河川の保護に協力を」「子どもたちに自然を引き継ぐため」などの文言が並ぶ「お願い」が不当請求に当たるかどうかを問われ「県の担当者はうつむいて口を閉ざした」というのがおもしろかった(まる見えリポート)

▼協力金要求が桑員河川漁協だけでないことは周知の通りだが、内水面漁協の中の一握りであることも確か。専業は困難だが、アユ漁など、観光漁業などをほそぼそと営んでいる。県は、そんな漁協に河川周辺の自然環境保全の多くを依存してきた

▼上流ダムの放水量の変化でコケが育ちにくく、アユはすっかり小ぶりになった。カワウの襲来で放流した稚アユが全滅する。自然崩壊などで河川形態が変わる―など、河川漁協を取り巻く環境は悪化の一途で、内水面漁協連合会は国、県に改善を要望するが頼りにならない。「見ぬふり」は協力金問題ばかりではないのである

▼「豊かな河川の保護」や「自然を引き継ぐ」などは、漁業権交付を通じ、逆に行政から漁協側に求められてきた。山を越えて協力金を求めに行ったなどといううわさはもってのほかとして、工事に伴う湾内や河川の汚れは漁業関係者との間で紛争のタネになってきた。現状維持は行政に代わって漁協が果たし、原資は予算ではなく工事業者の「協力金」でまかなわれることも否定できない

▼担当者はうつむいて、口を閉ざさざるを得なかったのかもしれない。