伊勢新聞

2021年3月7日(日)

▼今日で三重県独自の新型コロナウイルス感染症拡大対策「緊急警戒宣言」が解除される。鈴木英敬知事は4日のぶら下がり会見、5日の感染症対策本部員会議後の記者会見で、解除後も慎重な行動を継続するよう求めた。「気の緩みがリバウンドにつながる」とし「(新しい感染者の減少という)成果が水泡に帰すことが絶対にあってはならない」

▼全国一斉の緊急事態宣言や、秋の緊急警戒宣言で、いったん沈静化するかに見られた感染が、解除でいずれも宣言前を上回る襲来を呼び込んだ。景気浮揚へアクセル全開にしたことが大きな原因の一つと見られている。さすがに知事も、3度目に際し「エビデンス(根拠)はない」と強気で言い続けることにためらいが出てきたのだろう

▼2日の県議会で、知事は長いコロナ禍に対し「明けない夜は絶対にありません」と、シェイクスピアの「マクベス」の言葉を引用して「安心で穏やかな日常を1日も早く取り戻す」決意を語った。現在が暗いトンネルの中か、新しい生活へのスタート地点にいるか。どちらと見るかで対策は違ってこようが、知事は国にならってコロナ後の新しい生活を呼びかけながら、トンネルの中を出口に向かって進んでいる姿をイメージしているのではないか

▼大方の県民もそうに違いない。そのストレスに満ちた心理が解除とともにトンネルを脱した解放感と重なって「気の緩み」「リバウンド」につながったのがこれまでではなかったか。アクセルは今回控えているが、トンネルを出た、夜が明けたと解除を思わせることは、同じ結末を招きかねない。