2021年2月22日(月)

▼本紙企画『フットエイジング~足の老化~』の見出しが「たくさん歩けばいいか」。思わず目がくぎ付けになったが、著者の桑原靖・足のクリニック表参道院長は、いいか悪いかに直接答えてくれない。サブ見出しが「正しい動かし方が大事」。足だけでなく、骨盤を前後に動かすことを考えろというのだ

▼世が健康志向になり、脳卒中、がん、心臓病など死亡率の高い病気が実は生活習慣に深く関係があることが分かってきた。高血圧、糖尿病、肥満などの解消にウオーキングが効果的とされ、専門家が説くハウツー書も書店に並ぶが、方法論に各説あり、どうせ歩くなら最適な方法をと考える素人は迷わされる

▼英首相チャーチルが小走りに歩き、それが最適と考えていたのは有名だが、大股の勧めも多い。桑原院長は足を前後に大きく広げるのではなく、骨盤の動きで距離を稼ぎ、足への負担を軽減させるのがいいという

▼右足とともに右骨盤を前に出す時、右の股関節は外側に、左の股関節は内側に回旋し―となると頭が追いつかないが、これに伴い左足のももの前の筋肉とアキレス腱が大きく伸ばされる、という説明は実体験としてよく分かる

▼コロナ禍でウオーキングする高齢者は朝夕に増えた。免疫力が強化されるが、足は常に地面からの衝撃を受け続けないと筋肉や関節の機能が著しく低下する、と桑原院長は言う。一念発起で急に始めると致命的損壊になる。「無理に歩数だけ増やすのではなく」というのが冒頭の答えで、無理なく少しずつ負荷をかけていくことが、コロナ時代の健康維持だと説いている。