伊勢新聞

2021年2月16日(火)

▼新型コロナウイルス感染症対策があるとはいえ、ここ数年来の緊縮予算から打って変わって過去最大の県新年度予算案。鈴木英敬知事は「『(県花の)ハナショウブに願いを込めて』予算」と命名し、花言葉になぞらえて「うれしい知らせが県民に届く予算にしたい」

▼昨年が「令和の礎と針路予算」で、一昨年が基礎を固める意の老子の言葉「深根固柢」。2年続いた基礎固めを終え、いよいよ花開くということか。出口の見えないコロナ禍のトンネルを手探りで進んでいるような毎日だから、少々開花には早いが、その華やかさにあやかろうという気もあるのかもしれない

▼ハナショウブはノハナショウブを原種としたアヤメ科の園芸種で、多様な品種があり、うち伊勢系も有力種だが、花言葉になるとギリシャ神話が由来。全能の神ゼウスが妻ヘラの侍女イリス(英語読みアイリス=アヤメ)に言い寄り、あぐねたイリスがセラに「自分を遠くに移して」と頼み、セラは七色に輝く首飾りを与え、大空を渡る虹の女神に変えた。世界中を駆け回る伝令をつかさどることになったため「うれしい知らせ」の花言葉になったといわれる

▼端午の節句に飾る花としても知られ、今日では青、紫、ピンク、白、黄色のほか、複数の色が含まれる花もあり多彩。まさに虹の女神を思わせもする

▼パートナーシップ制度の採否で大きくぶれた性の多様性を尊重する条例案だが、都道府県で初めての性的指向暴露禁止などを盛り込み上程される。さらなる改良への知事の思いも込めたとすれば、これまでの命名の中では群を抜いている。