伊勢新聞

2021年2月12日(金)

▼津市が相生町自治会が設置したごみ箱や掲示板への補助金を詐取されたとして津署に告訴した。前葉泰幸市長が発表したが、誰を告訴したかは明かさなかった。市民を訴えておきながら相手を明らかにしないというのは無責任ではないか

▼警察や検察が逮捕者の容疑の諾否を明かさない時を連想させる。こちらは「捜査の都合」と、理由がはっきりしている。都合のいい時は明かすから、都合が悪いんだと推測もできる。津市の場合はどうか

▼ごみ箱1台につき50万円と申請されたが、実際はその3分の1だったとか、領収書の名前と違う業者が掲示板設置の工事をした疑いなど、なかなかに、細かい。津市の職員が特別優秀という話は聞かないが、一般的に、職員が最も見つけるのを得意とする虚偽、もしくは記載の誤りだ

▼見つけられなかったか、見つけなかったか。まさか職員が関与したわけではなかろうが、そのあたりに、告訴相手を明かせぬ事情があるのかもしれない

▼一般市民には決して謝らない職員も「特定の市民」には土下座や丸刈りにして謝罪したらしい。行政の問題を抱える地域の実力者に卑屈になるのは津市だけではない。そんな実力者の無理難題をスマートに処理して気に入られる職員が出てくる。他の職員は、実力者関係の問題はあぐねて、その職員に委ねてしまう。職員間で持ちつ持たれつの関係が生まれてくる

▼手続きが面倒な補助金絡みや、行政上必要な市への要望書などの書類は職員が代筆することも珍しくない。だから、告訴相手を公にしずらいんだよ―ということでなければ幸い。