▼津財務事務所は雇用情勢について「有効求人倍率では底堅さがみられるものの、感染症の影響により、弱い動きが続いている」。その翌日、三重労働局も「求人が底堅く推移することで、求人が求職を上回っているものの、引き続き雇用情勢に厳しさがみられる」。いずれも前月からの判断を据え置いた
▼三重労働局のデータを共有した上での判断。「弱い動きが続いている」と「引き続き厳しさがみられる」―の微妙な違いは、現状へのそれぞれの見方ということか。津財務事務所の高橋智所長は「緊急事態宣言などでサービス消費が落ち込んだ」として「感染拡大による下振れリスクの高まりに注意する必要がある」
▼「緊急事態宣言」を例示したことでより全国、特に対象の11都府県を意識しているようではある。三重労働局の西田和史局長は「感染拡大で求職活動を控える動きがみられ、改善したとは言えない」とする一方で「緊急警戒宣言が出て感染者が大きく増加する中で、離職を思いとどまる動きがある」。県内を見据えと言えようか
▼求職と離職の間で揺れ動く県民心理があり、企業の都合が加わわるバランスの上で、求人数が求職数を上回る状況が続いているということだろう。昨年の有効求人倍率は前年比でリーマン・ショック以来、12年ぶりの低下幅という
▼当時は県内各工場で外国人労働者が大量解雇され、在留か帰国かの選択を迫られ、一家離散や児童生徒の就学問題など深刻な混乱が広がった。胸が締めつけられるような記憶がよみがえってくるが、県政の中で、備えが充実した気はしない。