2021年1月18日(月)

▼三重大付属病院で発生した2つの事件の共通項は寄付金目当てということだろう。医療機器を巡る贈収賄事件では、臨床麻酔部の元教授は競合メーカーに「機器の性能に興味はない。寄付した社の製品を入れる」と伝えていたという。元教授の部下が起こしたカルテ改ざん事件も、薬品会社からの寄付狙いだったと第三者委員会が報告している

▼巨額の税金が横領された県のカラ出張事件は、事業に伴う飲食費への議会などの厳しい視線が動機の一つで、架空工事、実態のない残業手当などの裏金づくりに走った。やがて慶弔費や官官接待に使われ、職員同士の飲食代に消える。三重大事件でも寄付金の半額が飲食費に使われたという。人のすること、考えることに違いはない

▼とすると、きっかけは大学における研究費の削減と研究室単位での寄付金集めの義務化か。昨年就任した伊佐地秀司病院長は横断的な臨床研究の推進と地域医療への貢献を目標にあげた。新しい治療を生み出す臨床研究に力を入れていくという。大学法人化以来の生き残り策と無縁ではあるまい

▼国は平成27年、文系学部の「社会的要請の強い分野への転換」を求めた。昨年は「GIGAスクール構想」など、経済界の要請へカジを切っている。三重大付属病院の臨床麻酔部がどうするかはともかく、独立性の高い部門であり「臨床研究を病院全体と診療科を横断したようなところで研究プロジェクトとして進めたい」(伊佐地病院長)という方法論とは遠い位置にあるに違いない

▼背に腹は腹は代えられないという声が聞こえてくる気もする。