伊勢新聞

2021年1月15日(金)

▼「急がば回れ」ということわざをかみしめている。県が新型コロナウイルスの感染拡大に伴う独自の「緊急警戒宣言」を14日発令した。県の独自宣言は昨年4、8月に次いで3回目。せっかく浮上してきた県経済にまたも冷水を浴びせるからだ

▼GO TOトラベルの「キャンペーンに起因して感染が拡大しているエビデンス(根拠)はない」と語った鈴木英敬知事だが、県内に急拡大した原因が前回の宣言解除と同時に大きくキャンペーンに乗り出したせいではないというエビデンスもない

▼最初の宣言は愛知、岐阜両県の緊急事態宣言を受ける形で「感染拡大阻止緊急宣言」。二度目は県内拡大に伴い「緊急警戒宣言」。「緊急事態宣言の一歩手前」と付け加えた。今回は数歩遅れた気がするが、名称は「緊急警戒宣言」で同じ。新味の乏しさは否めない

▼前回、知事は「いまが正念場」と訴えた。今回は「いまが瀬戸際」である。正念場と瀬戸際で緊急性、切迫感はどちらが強いかなど言うもやぼというものだが、オオカミ少年を連想してしまわないか

▼移動自粛や飲食店の営業時短要請など、呼びかけにも目新しさはない。大人数、長時間の飲食回避に「昼食であっても」と追記するのもコロナ相手に当然過ぎる。協力要請店は県全域でなく地域で絞り込むという。県外との往来に濃淡があるためで「全県一律というよりエリアを絞って効果を高めたい」(鈴木知事)

▼伊勢志摩サミットから学力向上、国体・大会など、ことごとく「オール三重」で成果を上げてきた知事らしくない。本気度の違いでもあるまいが―。