伊勢新聞

2021年1月14日(木)

▼「窮すれば通ず」は中国の古書・易経に出てくる言葉。行き詰まってどうにもならなくなると、意外に活路が開けるの意。そこまで行かなければ効果的解決策は生まれないという意味で使われることもある。「窮鼠猫を噛む」と似る

▼県がフリーマーケットアプリ「メルカリ」を通じてふるさと納税を受け付けるのは、財源に窮した末か、単にふるさと納税額増加策の一環か。取り立てて積極県ではないが、鈴木英敬知事は「工夫して納付していただきやすい環境を整えたい」と語っていた。その後、鳥羽市や志摩市の真珠が総務省から過度な返礼品としてやり玉にあがるなどしたが、制度も改まり、そろそろ工夫へ踏み出したか

▼売上金を寄付するサービスを利用するのだという。納付しやすい環境整備ということなのだろう。返礼品はなしというのは、制度の趣旨を逸脱しないということか。使途は観光地のバリアフリー化というのは、GO TOトラベルが行き詰まった感のある中で、観光振興に結びつく案と言えなくはない。これぞ「通ず」だろう

▼運営会社の提案で利用を決めたというのは、ビジネスチャンスのためには、行政の公平性にこだわるのは悪平等になるという鈴木知事らしい。「メルカリは幅広い世代や地域の人たちが活用しているサービス」という。国政調査員の手提げ袋を出品し、高市早苗総務相(当時)が詐欺など悪用への恐れを指摘したのは記憶に新しい。盗品や拾得物出品が問題になったが、市場というのはそういうものかもしれない

▼貧すれば鈍す。鈍すれば窮すは浮世のならいではある。