伊勢新聞

2021年1月10日(日)

▼「忘年会や親族間での食事、帰省による拡大がみられる」(鈴木英敬知事)のだそうである。県内の1日当たりの新型コロナ感染者数が過去最多を更新し始めた5日から連続して感染防止対策を呼びかけてきたが、初めて「大人数や長時間の飲食」という漠然とした感染源をより具体的に指摘して自粛を要請したことになる

▼知事の会食、移動の自粛要請にもかかわらず、毎日最多感染を更新している。先月末から県の指標が4つ全てで上回っているのに、対応を示唆した8日の対策本部員会議では県独自の対策や宣言はなかった。国の1都3県への緊急事態宣言に併せ、同地域への移動自粛などを求めたのがメイン

▼新型コロナ対応の病床確保や自宅療養併用、入院対象者の選定体制など、いずれも内部問題が中心に協議され、むしろ県民を不安に陥れる内容になっている。事業者への影響を聞き取るための緊急経済会合開催も確認。知事の「(感染拡大を止める)今が瀬戸際」という発言の緊迫感を緩めてしまわないか心配になる

▼首都圏だが、昨年11―12月かけての「勝負の3週間」(西村康稔経済再生相)に国は敗れた。東京都医師会長が「真剣勝負したい3週間」とした年末年始も惨敗だった。緊急事態宣言自体、対象、期間とも専門家から効果への疑問が出ている。知事の「今が瀬戸際」はどうか

▼「今がピークかは分からず、まだ拡大の可能性はある」と前置きしての言葉であり、県民に「お力添えをいただきたい」と続けた。単身「勝負だ」と挑みかかるほどの戦略も自信もないということかもしれない。