伊勢新聞

2021年1月9日(土)

▼「感染症に関する情報を県民に伝わるように伝えることの難しさも痛感した」と言ったのは昨年の「今年の一字」を「伝」と発表した鈴木英敬知事。なるほど、これならそうだと思ったのは、1日当たりの新型コロナ感染者数が過去最多を更新した5日から3日間、連続して臨んだ記者会見の報道を見てである

▼5日は「大人数や長時間の飲食で感染したとみられるケースが相次いでいるとし、改めて感染防止対策を徹底するよう県民に呼び掛けた」。6日も大人数の長時間飲食を挙げ「対策の徹底を呼び掛けた」。国の緊急事態宣言再発令を受けた7日は対象地域への移動自粛を呼びかけた

▼これでは伝わるまい。規範に反した新型コロナ感染者を「処分する」と言ったという県に明らかにされた三重大が、県への「伝え方が適切ではなかった」と釈明した。脅すつもりだったということのようだが、伝え方の適不適は受け取り方の適不適にも関係する。正確に伝えたという側と、そうは聞いていないという側の水掛け論は日常茶飯事だ

▼三重大教授が脅しではなく「心に響くようなことを」と批判したという。伝え方の大切さを指摘したわけだが、正確に伝えるだけでは十分ではないと言っているようでもある。同じことの繰り返しや政府発表の後追いでは「コロナ疲れ」や「コロナ慣れ」した県民の心には響くまい

▼情報を伝わるように伝えるには正確さや内容に加えインパクトも欠かせない。新味が打ち出せないならなおさらどうインパクトを出すかの工夫は必要だろう。漫然と情報を垂れ流すだけでいいはずがない。