▼4月以降確認された豚熱(CSF)感染イノシシが急増し、拡大が懸念されていた矢先だった。養豚場として三重県内2番目の発生が伊賀市で確認され、年末年始にかけて7199頭が殺処分される
▼コロナ禍で静かな正月が求められるが、ウイルスはそんな人間の事情など配慮してくれない。まるで油断を見透かしたかのように襲ってくる。が、ウイルスに意思があるわけではなく、ウイルスはウイルスなりに、人類の50―100万倍という進化のスピードを駆使し生き残りを図っているだけなのだろう。変異ウイルスも、インフルエンザに見られる新型出現と、仕組み的には違わないのではないか
▼伊賀の養豚場で死んだ子豚は生後50日未満。県は母豚からの免疫が切れた直後とみている。わずかの隙を狙い澄ましてというわけで、可能性を言うなら、ウイルスは単に生き続けるために進化の速度をあげてワクチンを無力化し、豚の中で安住を目指したが、子豚は耐えられなかったのかもしれない
▼ウイルスは生命が高等生物になってから別動隊となり、それぞれの生物の中で不活性化して共存してきたとみられている。何らかの刺激で活性化し、種を乗り越えて生き残りを図ろうとして、初期には新たな宿主に強毒性をもたらす。何らかの刺激の最有力が人間の開発による種の滅亡であることは言うまでもない
▼神が定めようとした寿命をロバ、犬、サルが返上し、人間が返上分まで引き受けて、彼らの苦悩も引き継いだというのはグリム童話。奪い取ったのならどうなるか。人類の未来を予言するかのような一年であった。