2020年12月29日(火)

▼無愛想で木で鼻をくくった答弁の菅義偉首相がインターネット番組でにこやかに「ガースーです」と自己紹介し、河野太郎行革担当相が「私が『ノーコーです』と自己紹介して何かおかしいか」と擁護したほかはおおむね批判が多かったらしい

▼言葉遊びやだじゃれが好きな割に、日本人は悪ふざけを嫌う。「平成おじさん」として知名度をあげた小渕恵三氏が組閣後不人気で、自身をからかう新聞の川柳を披露して親近感を出そうとしたことがある。「令和おじさん」の菅首相も、内閣支持率急落で似たようなことを考えたのかもしない

▼「ガースー」や「ノーコー」など、言葉を逆さまにするのは特定の集団だけに通用する符丁や隠語に古くからある手法で、宿街を「ドヤ街」、札屋を「ダフ屋」。人名でも「タモリ(森田一義)」などの例がある。使用に問題はなく、仲間内で親しさを増すのも確かだが、品は落ちる

▼愛称という意味では昔、佐藤栄作首相が「えいちゃんと呼ばれたい」と言った。「伴ちゃん」と呼ばれて愛された大野伴睦を偲ぶ会でのことで、無愛想と評されることを気にしてとも言われた。のち確認すると「場所だけは選んでください」。誰も呼ばなかったらしい

▼新聞は「首相」と書くが、記者が呼びかける時は「総理」と言う。この堅苦しさを嫌ったのが海部俊樹首相で、就任時に「海部さんでいいのではないか」と言った。で、しばらく「海部さん」と呼びかけていたらそのうち返事をしなくなったそうだ

▼「ガースー」「ノーコー」と記者らがこのあとしばらく呼びかけてみたらどうなるか。