伊勢新聞

2020年12月28日(月)

▼26日深夜、津市の上浜町二丁目交差点を消防指導者がサイレンを鳴らして通る。あとに消防車が1台だけ続く。大きな火災ではないようだが、師走の街に寒々と響く。22日午後10時過ぎには工場火災で社員1人が全身やけどの重傷を負うなどした

▼尾鷲市でも納屋の壁が燃えている。年の瀬は火災のイメージがつきまとう。焼け出されて一段と寒さを増す悲惨さとともに―。火災が年々減少傾向の中で、空気が乾燥する冬場は多い季節である。特に28日は有名な八百屋お七が自宅に放火した日。折からの強風にあおられて大火災になったという話はのちの脚色としても、その後もこの日は江戸の町で大火が続き、明治2年には数寄屋橋から汐留に至る3402戸が全焼したという

▼現代の建物火災の原因は「たばこ」「たき火」「こんろ」が御三家で、放置、消し忘れなどの不注意や不始末から発生。たこ足配線など電子機器から発火し、ほこりに燃え移るケースなども多い。行き届いた掃除が求められる。せわしないだけに冷静な対応が求められるというのに、今年はコロナで明け暮れた。年内に治まらぬとは多くの人が考えなかったのではないか

▼感染者は急拡大し、英国で猛威を振るう変異ウイルスが水際作戦の盲点を突いて国内にも上陸しているという。厚生労働省の調査では、緊急事態宣言中に「不安を感じた」人が63%。その数字はさらに深刻になっていよう。魔が差すのはそのような中で起きるに違いない

▼衣食足りて礼節を知る。同時に、必要な情報の入手が年の瀬の人心の乱れを安定させる。