2020年12月25日(金)

▼パートナーシップ制度について鈴木英敬知事には二度、驚かせられた。一度目は11月の県議会で「私としては導入したいと考えております」と明言した時。二度目は「新たな分断を生めば条例の趣旨とずれる」と制度には触れないとした一昨日の記者会見

▼もともと「住民登録とか市区町村の仕事」だと県の採用には否定的だった。伊賀市が条例ではなく、要綱で制定したことにも「申請はしてみたけども実は、ということがないように」など、性的マイノリティー対策自体への消極性をうかがわせた

▼多様性を認め合うダイバーシティ社会を目指す「ダイバーシティみえ推進方針」を翌年策定し、東京オリパラに伴い東京都が性的マイノリティーの差別禁止条例を制定したことなどで前向きとなり、この10月に本人の了解を得ずに性的指向などを暴露する「アウティング」禁止を都道府県で初めて明記する条例の中間案を示した

▼その1カ月後、パートナーシップに踏み込み、さらにその1カ月後、撤回した形。「当事者らの不安の解消を図り、子どもたちの将来への希望にもつながる」という高らかな意義と決意の表明から「パートナーシップ制度と読み込める全体的な環境づくりの条文を入れた」へ

▼自民党県議団から「県民を賛成派と反対派に分断している」の指摘。アウティング禁止ならともかく、パートナーシップなど具体的な現状の前進には逆風も強まったのかもしれない

▼「思いはまったく変わっていない」と知事。当事者らをぬか喜びに終わらせても、変わらざるを得ない事情があったということだろう。